理系の大学生数人と話す機会があったので、文系出の小職はこんな問いを投げかけてみた。「文系学部不要論を君たちはどう思いますか?」▼結果は質問者にとってはうれしいものだった。文系の科目にも興味があるし、文系の学生と話をするのは彼らの文系知識を吸収できるから為になるし楽しい。文系的センスを備えた先生の授業は面白い、等々▼文理融合が今ほど求められている時はない。というより、文理の区別そのものに意味があるのか、という問いかけがとても重要な時代だというべきか。そもそも文理は最初から分かれていたわけではない。万学の祖アリストテレスやルネサンス期のレオナルド・ダ・ヴィンチの偉大な仕事がその証左だろう▼日本でも文理一体の例をさがせばきりがない。森鴎外、寺田寅彦、湯川秀樹、水原秋桜子、有馬朗人、永田和宏、坂井修一…。理系の仕事と小説や俳句、短歌などの文芸を高いレベルで両立している▼理系の学生は、哲学、文学、社会学など文系的学問も生涯にわたる友としてほしい。私たちは生物として快適に安全に永らえたい存在であるとともに、考える葦として生きる意味を求めずにはいられない存在でもある。〈「哲学を必修にせよ」つぶやけど経済はここに土用波なす〉(坂井修一)。こういう危機感を共有したい。(20・8・5)

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