ブロードウェイミュージカルの名作で1961年に映画化された「ウエスト・サイド・ストーリー」が再び映画化され、日本で公開されている。ミュージカルといえば夢と希望、ハッピーエンドが当時のお約束だったそうだが、社会的な問題を取り上げ、しかも禁断の恋愛が悲劇で終わる型破りともいえるストーリーだ▼舞台は再開発が進む1950年代のニューヨークのマンハッタン。その頃、ウエスト・サイドはスラム街で、ポーランド系移民のジェッツ、プエルトリコ系移民のシャークスという2つのギャング団が縄張り争いを繰り広げる▼登場する若者たちは成功を目指すものの貧しい生活から脱却できず、自らの居場所を確保するため異なる者を暴力で排除しようとする。貧困が生む対立と分断を描くこの物語は奇しくも今日的な意味を帯びている▼スティーブン・スピルバーグ監督はインタビューで「人々の分断は広がり、もはや人種間の隔たりは一部の人の問題ではなくなった」と指摘している。60年以上前に示された問題は解決に向かうどころか深刻さを増していると言いたいのだろう▼重たいテーマを扱いながらも躍動感あふれるダンス、「トゥナイト」など数々の名曲によって立派なエンタテインメントに仕上がっている。2時間半という上映時間を感じさせずに見終わった。(22・3・4)

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