「筑後平野の百万の生活の幸を 祈りながら川は下る 有明の海へ 筑後川 筑後川 そのフィナーレ ああ」。丸山豊作詞、團伊玖磨作曲の混声合唱組曲「筑後川」のラストの歌詞である。ユーチューブで聴いたら、この歌を合唱した中学時代の感動がよみがえった▼先の「令和2年7月豪雨」で筑後川は氾濫した。同じ九州の球磨川ほどの被害は出なかったが、おそらく相当の被害をもたらしただろう。そもそも筑後川は、「板東太郎(利根川)、筑紫次郎(筑後川)、四国三郎(吉野川)」日本三大暴れ川と称される。治水にかけた先人の努力が偲ばれるが、それでもこうして氾濫は起きる▼ギリシャの歴史家ヘロドトスが「エジプトはナイルのたまもの」と言ったように、ナイル川が運ぶ肥沃な土のおかげで壮大な文明・国家が築かれた。川は生命に恵みをもたらす。だが、川は禍いももたらす。地球温暖化の影響とされる豪雨はここ数年、毎年のように大きな被害をもたらしている▼国土強靱化、その中でも治水は優先課題であるべきだ。だが、ここに対ウイルスという難題がのしかかる。コンクリートも、ワクチンも医薬も「足りない、遅い、間に合わない」。国家財政は赤字をふくらませる一方で、将来に付けをまわさざるを得ない。若い世代に厭世観が広がらなければよいのだが。(20・7・22)

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