大きな揺れの後、途絶えることのない余震。震源地から遠く離れた東京都内の本社4階オフィス、山積みされた資料が瞬く間に崩れ落ちる。この初めて味わう光景に、恐怖と不安以外に感じるものはなかった。首都圏でも交通機能が麻痺し、オフィスで家族のことを思いながら一夜を過ごした▼2011年3月11日午後2時46分頃、宮城県牡鹿半島の東南東130キロメートル付近、深さ約24キロメートルを震源とするマグニチュード9・0の巨大地震は、東日本を中心に甚大な被害をもたらした。あの凄まじいばかりの津波は多くの人、家屋を飲み込んだ。福島第一原子力発電所の事故は美しい故郷を奪い、多数の住民を離れ離れにさせた▼そして先月13日に福島・宮城を襲った震度6強の地震は、その余震だった。関東でも震度4を観測し、長く続く揺れに10年前の記憶が蘇った。1000年に一度といわれる、その存在の大きさを主張するかのように、度々私達の前に姿を現してくる。忘れるなと言わんばかりに▼人間は時に悍ましいほどの恐怖を与えるが、自然の脅威には敵わない。地震、津波、豪雨、そして今、感染症のパンデミックという現実を突きつけられている。十分すぎる備えはない。度重なる被害を目の当たりにしてきた我々は、これまでの経験からさらに想像し、立ち向かうしかない。(21・3・11)

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