ナノテクノロジーの一種であるメタマテリアルは、超越を意味する「メタ」と物質の「マテリアル」を組み合わせた言葉で、自然界にはない振る舞いをする人工物質を指す。波長を下回る超微細な周期構造を物質に付与することで実現でき、光や電波などへの応用が期待されている▼最近では特定の波長帯を反射する透明フィルムが開発され、5G通信環境の改善に貢献する。4Gに比べて高周波である5Gは伝送容量が大きい一方、直進性が高いため遮るものがあると電波が減衰してしまう▼基地局を増やす対策はあるものの、追加の費用がかさむのが課題。このフィルムを窓や天井などに貼っておけば、電波が届きにくい場所をなくすことができる▼メタマテリアルは音響の分野にも広がっている。空調機器の防音材はその一つ。従来の消音器では難しかった通風性と防音性の両立を可能にした。自動車の次世代遮音材としても実用化が見込まれており、静音化とともに大幅な軽量化を図ることができる▼メタマテリアルの研究が本格化したのは2000年頃と比較的新しく、光の屈折率を制御することで「透明マント」ができるかもしれないという論文が注目された。マジックのタネに使われたかどうかは不明だが、さまざまな課題解決に役立つイノベーションとして広がるかもしれない。(22・2・25)

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