身内の遺品整理をしていると、断捨離の大切さをつくづく感じた。物を大事にするのと、不要な物をいつまでも取っておくことは別の話。几帳面な故人の性格は理解しつつも、後々のことを考えた日頃の行動の大事さを身を持って感じた▼物を捨てる際、ときめくか、ときめかないかが判断基準だそうである。他にもステ活、ミニマルライフなど身の回りを整理する今時の言葉はある。いずれも日本人の美徳とされる「もったいない」という固定観念や執着心を捨てて、身軽な生活や人生を目指す行動や考え方だ▼もともと昭和の物が圧倒的に不足していた時代から豊かな時代へと移行し、高度成長に伴って物を持つことが一つのステータスとなった。長く続いた大量生産・大量消費の時代が終わりを告げ、個人の価値観を尊重した取捨選択の時代に移って行ったのだ▼世の中は多様性を尊重し合う時代に向かっている。物を持たないことに喜びを感じるとすれば、その人にとって本当の贅沢だろう。お金をかけずに心が豊かになるなら、それに越したことはない▼自粛を要請され自宅で過ごす日が多かったせいで「捨てる物も無くなった」という、冗談めいた話はよく聞く。だが、何日あっても整理が進まない立場からすれば、心を鬼にしてときめく気持ちを抑えないと全く前に進まない。(21・8・19)

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