「文藝春秋」を読むようになったのは社会人になってから。毎月読むわけではなく、車内吊りや新聞の広告で面白そうな特集があったら購入するという半常連である。ほぼ35年間この雑誌を読んできたのだが、今の今までなぜ気づかなかったのだろうという連載記事を直近11月号で発見した▼宇部興産が提供する記事広告「とぴっくす・ぐろーばる」である。掲載されるエッセイは、宇部興産およびグループの社員が、ビジネスあるいは留学のために、海外で暮らした折りのとっておきのエピソードだ▼スタートは1978年(昭和53年)1月。変動相場に移行してから3年後、1ドルは300円ほどで、海外はまだ遠かった。当時は日本企業の海外進出がようやく本格化した時期で、UBEも製品輸出や、海外プラント建設が活性化し、多くの社員が海外へ旅だった。こうした活動の実態を材料に、国際企業のイメージづくりの目的で社員の海外体験を紹介するシリーズを始めたという▼同社ホームページで2010年から現在までの分を読むことができる。これがなかなか面白く、時間を忘れて読みふけった。タイトルも面白い。秀逸だと思ったのは「死海に浮んでも新聞を読めなかった話」「巨大ハリケーンの目を見た話」「38度C以下では病人不合格という話」等々。ぜひご一読を。(20・11・25)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る