先端の科学技術を魅力的にみせながら実用化していくにはどうしたらよいか―。工学系の領域をほぼ網羅する東京大学生産技術研究所では「価値創造デザイン推進基盤」を通じて、テクノロジーとデザインの融合を実践している▼新野俊樹教授は、従来のものづくりは「いいものを、安く、速く」がテーマだったが、「技術者の立場で何を作るべきか、何をすべきか、を考える必要がある」と指摘する。そうした視点で新たな価値を生み出すためにはデザインの力が大きな役割を果たす▼英国王立美術大学院大学(RCA)と共同で設立したデザインラボではデザイナー、エンジニア、科学者がコラボする。その活動の一つが「トレジャーハンティング」。数ある研究テーマの中から、デザイナーが社会に展開可能な種を見つけ出す▼その種を「プロトタイピング」によって素早く形にする。当事者間の議論を深めたり、一般の人たちの意見を吸い上げるためだ。例えば海洋センシングシステム「OMNI」は実際の海洋環境でテスト・評価を繰り返しながら試作機を作り込んでいる▼デザイナーが加わることによって、科学者にはなかった気づきが生まれることもある。化学企業でもコラボやデザインが重視されるようになってきた。機能を価値として伝える手法はいろいろあるはずだ。(20・2・28)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る