シンガポールの町が国旗でにぎわっている。独立記念日の8月9日が近づいてきたためだ。博物館などの公共の建物はもとより、集合住宅の窓にも国旗が並ぶ▼この国では国旗を掲げられる期間が法律で定められていると知って驚いた。独立記念日をはさんで7月1日から9月末まで。この期間をはずすと1000シンガポールドル(約10万円)の罰金や6カ月の懲役を科せられる可能性がある。掲げられたまま傷んでしまうと威厳が損なわれるというのが理由らしい▼2日に国旗の掲揚に関する新たな法案が国会に提出された。大臣の許可によって7~9月以外にも国旗を掲揚できる期間を設けられるようにする。五輪の開催期間中などが念頭にあるようだ。加えて国定記念物を損傷した場合に準じた罰則を設け、違反に対する罰金は最高3万シンガポールドルとする▼法案提出に先立ち、国のシンボルのより創造的な使用法を検討するために設置された市民によるワーキンググループは、オンライン報告プラットフォームを通じて国旗の誤用を防止することを政府に勧告していた▼国の象徴たる国旗の軽視を許せば分裂しかねない小さな多民族国家がはらむ危うさと、国家と国民に緊張感のない国で白米に梅干しを埋めて「日の丸」と呼べる自由を思う。(22・8・4)

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