新型コロナウイルスの新規感染者が急増している。第7波に入ったらしい。今月末から来月中旬の間のピークに向けて増加し続けると懸念されている▼日本が初めて経験した疫病は天然痘だった。仏教が伝来した6世紀ごろに大陸から持ち込まれた。8世紀に起こった大流行は、当時の日本の総人口のおよそ3割にあたる100万~150万人が感染により死亡したとされている。これは国を揺るがし、聖武天皇が奈良に大仏の建立を命じた契機となった▼このため大仏が開眼した752年に始まった東大寺の「お水取り」の儀式には疫病退散の祈りが込められている。1200年以上の間、毎年欠かすことなく執り行われてきた。手本にした中国では時代とともにやり方が変わってしまったが、日本には儀式が始められた当時の姿がそのまま残されているという▼先の参院選で自民党が大勝した。民意は安定を選んだ。「自民の政治は前例踏襲で令和の時代に合わない」と批判してきた日本維新の会の松井代表は選挙後、党勢拡大にもかかわらず、自民党の圧倒的強さへの敗北を語った。伝統への敬意か、事なかれ主義の極みか。いずれにせよ、飽くことなき前例踏襲は、他国にはまねのできない日本が世界に誇る行動様式だ。これを打破するのは容易ではなさそうだ。(22・7・14)

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