日本は医療先進国-。具体的な指標を根拠にというより、漠然とそんな認識を多くの国民が共有していた。ところがどうも実情は違っていたようだ。今回のコロナ禍において、これまでのイメージを覆す事実が露呈してきた▼例えば、重症患者を治療する集中治療室(ICU)不足。人口10万人当たりのICU病床は日本は約5床。米国の35床、ドイツの30床に遠く及ばず、多くの死者が出ているイタリアやスペイン、お隣り韓国の半分でしかない▼人口1000人当たりの医師数は2017年で2・4人。33年には3・1人まで増えるが、それでも17年時点のOECD平均3・5人より少ない。これだけで全体を語るべきではないが、医療リソースの貧弱さを示す数字だ▼さて、ここにきて産業界の取り組みが加速してきた。トヨタ自動車やソニーなどが、人工呼吸器の製造支援に名乗りを上げた。工程管理や部品供給、保有技術の応用で医療機器メーカーを支援する。化学各社も相次いでマスク、防護着、消毒剤、治療薬などの増産に立ち上がる▼感染が拡大するなか、施設や機器、医療装備、さらには専門スタッフの不足という劣悪な環境下で、医師や看護師の献身的な奮闘が続く。最前線を支えるために今あるリソースで出来ることを総結集し、日本のものづくり産業の底力を発揮したい。(20・4・20)

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