ユニークな研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」に今年も日本人が選ばれた。動力学賞を受賞した京都工芸繊維大学の村上久助教らの研究成果は「歩きスマホ」をする人が他の歩行者たちに与える影響。日本人の受賞は15年連続で、科学分野の研究力低下が指摘されている我が国にとって救いかもしれない▼歩きスマホをする人がいると、周りの人の歩く速度も遅くなったり、衝突回避のために大きく動いて危険度が増すことを実証した。この研究成果は交通管理、また群れをつくって動くロボットの開発など、多様な分野への応用が期待できるものだ▼受賞のニュースは例年通り広く報道された。あれだけ指摘されながら、今でもしばしば遭遇する歩きスマホ。常習犯には今一度、周りにどれだけの影響を与えているかを知ってもらういい機会になればと願う。ただ、一番怖いのは無意識のうちの行動である。人間の行動は90%以上が無意識に行われているという説もある。意志の力は大したことがないということか▼無意識の方が圧倒的に強いなら、意識した行動を常習化すれば良い。簡単にいうが、なかなか難しい。企業も全社員のベクトルが合っていなければ進化は遅れ、社内の衝突もあるだろう。この場合、人間の行動のうちの10%もない強い意志に頼る部分が多いかもしれない。(21・9・16)

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