鍛錬された呼吸法で技を繰り出し鬼を倒す。迫力あるシーンが延々と続く。映画「鬼滅の刃」の勢いが止まらない。コミック、テレビ放映で人気を集めていたとはいえ、公開後は日本歴代記録を次々と塗り替えている。子供から大人まで男女問わずの人気ぶりで、関連グッズもかなりの売れ行きだ▼愚息に誘われ鑑賞したシネマコンプレックスでは、公開2週目で1日20回の上映。1日40回のところもあったと聞くと、まさに社会現象としか言いようがない。鬼と化した妹を人間に戻すべく奮闘する主人公もそうだが、属する鬼殺隊隊員らの真っ直ぐでブレない正義感が伝わってくる▼コロナ禍で人が集まる場所は制限され、映画館もしばらく閉ざされた。密を避けるため1つずつ席を開けながら再開されたが、それも解除されていつも通り、いやそれ以上の混み具合だ。しかし、売店は飲み物だけしか売られておらず、もちろん皆マスク着用。それだけ除けば、以前に戻った感覚になる▼歴史的大ヒットは落ち込んだ消費を押し上げる。こんなに喜ばしいことはない。感染防止に秩序正しく取り組む日本人ゆえ、流行り物にも列を成して一斉に飛びつく。そこにはコロナ禍による疲弊からの開放という思いもあるのだろう。とりあえずは便乗し、長いトンネルの出口を目指して全集中だ。(20・11・5)

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