この5年間で日本の人口が86万人減った。空想的な見立てであるが、数字的には堺市、新潟市規模の大都市から人が一人もいなくなることを意味する。ただ、減少率は10~15年の0・8%から縮小した。自然減は加速したが、それを補う外国人の流入があった▼減少率が鈍化したとはいえ、横ばいでも増加したわけでもない。少子化の傾向にコロナ禍による婚姻率の深刻な低下が重なり、日本の人口は数年前の人口予測を上回る速度で減っていきそうだ▼何年でどれくらい減少した、という類の話を聞くと、なぜか森林の減少を思い出す。昔からずっと、1分に東京ドーム何個分の面積の森林が世界から失われている、と報告されてきたが、世界にはまだ森林が40億ヘクタールある。90~20年の30年間で1・8億ヘクタール(日本の面積の約5倍)が減少した▼仮にこのペースが続けば、あと675年で地球上から森林は消滅してしまうが、そうはならない。森林面積の純減速度は、年平均784万ヘクタール(90~00年)から474万ヘクタール(10~20年)と減速しつつある。中国での植林の増加や森林の自然拡大が要因だ。ブラジルなど熱帯地域も手をこまねいてはいないはずだ▼なにかが減っていくのは、なにかが増えているからだ。サステナブルの観点で、その増殖に歯止めをかけなければならない。(21・6・30)

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