日本各地で毎年のように起きる大規模水害。未然に防ぐことができればそれが一番だが、起きてしまった被害にどのように対応していくかも重要だ。救援活動を行うためには浸水範囲を迅速に把握することが求められている▼そこで活躍が期待されているのが人工知能(AI)。東北大学災害科学国際研究所などのグループが過去の水害データを機械学習させ、新たに発生した被災地の観測データから浸水範囲を推定できることを実証した▼人工衛星から地表に照射されるマイクロ波を観測するSARと呼ぶレーダー画像を利用。浸水の度合いによって反射・散乱特性は異なるため、“浸水した個所はこういう変化を示す”ということを学習させた▼2018年に起きた西日本豪雨水害の被災地(倉敷市真備町)の特徴をAIに学習させ、19年の台風19号による被災地(郡山市)の観測データを分析し浸水範囲を推定するアルゴリズムを構築。その結果は国土地理院の調査結果とほぼ整合し、約8割という高い精度で推定できた。リアルタイムに近い早さで把握が可能としている▼水害発生後に浸水家屋棟数が推定できれば、それによって被災者数、必要な支援物資の推定などにもつながる。過去の事例を将来にどのように役立てるか。「データ×AI」の活用が着実に広がりつつある。(20・8・7)

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