具体的で身近な生命への脅威は恐ろしい。そのことはいま、誰しもが分かっているし、感じている。しかし、脅威はいろいろなかたちで私たちを取り巻いている。じわじわと首を締め付けてくる地球温暖化や海洋プラスチックのような脅威もある。すでに生まれてしまっていながら何らかの目的で隠されていたものが、ある日突然、衆目にさらされるというようなこともある▼たとえばイギリスにおける水道の問題はこれに属するだろうか。近刊の『水道、再び公営化!』(岸本聡子)によれば、完全に民営化されているイギリスの10の水道会社は2018年の時点で合計7兆円強の債務を持つにいたったという。民営化したのにこの巨額の債務はいったい?と思うところだが、実は「したのに」ではなく民営化「したから」この巨額債務だと指摘する▼この10社は、借入金を膨らませて税金を減らす、株主に多額の配当をする、などの3つを目的として必要のない借り入れを故意に繰り返していたという。水道を再公営化すれば、年間3500億円が節約できるなどのグリニッジ大学の試算もある。そして、シンクタンクの世論調査では83%が再公営化を支持している▼日本の事例についても触れ、警鐘を鳴らしている。「命の水」である。最大限の関心を持ち続けたい。(20・5・13)

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