あるところに平和な村があった。ある日、その村を守っていた虎が病気になった。このまま虎が死んでしまえば、よそ者が村を襲ってくるに違いない。そう考えた村人は、虎の病気が快癒することを願った▼村には獣の病気にも詳しい医者と、薬の調合が得意な薬屋と、虎と戯れる豪傑者がいた。しかし、この3人は仲が悪かった。医者は、自分が指示した薬の調合だけで金を儲ける薬屋をこころよく思っていなかった。豪傑者のことは知能も常識もない者として軽蔑していた▼薬屋は、愛想良く医者に接するが、尊大な態度に腹を据えかねていた。また、金の無心をする豪傑者を忌み嫌っていた。また豪傑者は、理屈だけで虎に近付くこともできない医者を笑い、頼めばいつも金を渡す薬屋を馬鹿にしていた▼ところで村にはもう一人、とくに際だった能力はないが偏見を持たず、医者とも薬屋とも豪傑者とも交友のある瓦版屋がいた。虎の病を知った瓦版屋は、医者の的確な診断力と、薬屋の素晴らしい調合技術と、虎を恐れぬ豪傑者の勇気を讃える記事を書いて村中に配った▼すると医者は薬屋に、虎の病気に必要な薬を教えた。薬屋は薬を調合し豪傑者に渡し、豪傑者は虎に薬を飲ませた。虎はみるみる快癒し、村人は喜んだ。そういう瓦版の役割を果たしていきたい。(22・3・1)

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