食材を切ったり煮たり焼いたりするのが料理である。刺身のように生で食べたり、肉や魚を焼いたり蒸したりあぶったりする。これでも十分においしいが、料理の醍醐味は混ぜ合わせるところにあると言ってもよい。液体と固体、液体と液体、液体と気泡など、かき混ぜにもバリエーションがある▼ミキシングや撹拌の専門書を読んでいたら、身近な料理方法、とくに液体混合を料理用語ではなく化学工学の用語で説明してあって興味深かった。たとえば、みそ汁は「低粘度液中への固体の分散」、カレーライスのカレールーは「高粘度液中への固体の分散」、ホイップクリームは「高粘度液中への微細気泡の分散混合」など。そして、食材混合においては熱が加えられることが多い▼この混ぜ方の良し悪しで、味はもちろん見た目の良さ、舌触りなどが変わってくる。料理上手は混ぜ方上手、といってもよいだろう▼産業の世界でも、撹拌機などによる液体混合の良し悪しが素材や部品の出来を左右し、ひいてはそれを組み立てる自動車や電子製品、住宅などの品質に影響する。産業や生活を根幹から支えるプロセスである液体混合だが、世の中の注目度がいまひとつなのが気になる。「撹拌翼」をキーワードに画像検索し、そこに現れる翼の姿の多様性をぜひ見て欲しいと思う。(21・7・28)

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