振り返ると、新型コロナに翻弄された1年だった。あと3日で2020年は終わるが、来年もコロナとの闘いは続く。しかしワクチンが普及し始めれば、経済の本格的な回復への足掛かりとなろう。史上初の延期となった東京オリンピック開催への期待も残る▼来年の干支は「辛丑(かのと・うし)」。辛は刺青の針を表す象形文字で、つらい、からいなど苦痛を想像させる。丑は新たな息吹を表し、殻を破って発芽するイメージだ。痛みをともないながら新たなものを生み出す、来年はそんな年になるのか▼干支は60年周期。では60年前の1961年にどんなことが起こったのか。最大の出来事は、旧ソ連のガガーリンによる前人未踏の有人宇宙飛行の成功だろう。「地球は青かった」という言葉は世界中の人々を歓喜させたという。空軍パイロット数千人の中から選抜され、命がけで積んだ訓練は苦痛しかなかったのではないか▼時代は大きな変革期。変革の過程では痛みもともなうだろう。しかし痛みを覚悟しながら挑戦し、初めて新たな地平に立つことができる。失敗や苦痛を恐れずチャレンジする。青く美しい地球をずっと残すため、社会システムを変える。化学産業は課題解決の主役として取り組むべきことが山ほどあるが、恐れず挑戦を始める年となることに期待したい。(20・12・28)

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