その茶色い食べ物は「神の食べ物」という名前の木になる豆が原料。かつて貢ぎ物や薬などに珍重され、探検家コロンブスが南米から欧州に持ち帰ったのが500年以上前。しかし当時、欧州では疲労回復や長寿が期待できるとして、長く持ち出しが禁じられた。その後、砂糖などを加え、庶民が口にできる食べ物として広がることになる▼ある国では「その日」になると、女性が男性にその茶色い食べ物をプレゼントしながら愛を告白することもあるようだ。だから、その国の男性は「その日」になるとソワソワする。仕方なく義理でプレゼントしている場合が大半であるにもかかわらず▼その国では、より美味しくする技術を進化させている。その茶色い食べ物は結晶の融点や安定性が繊細で、6つの結晶型が存在する。このうち5番目の結晶型のみが体温付近で溶け出し、味と香りを放出する。人々はこの5番目の結晶型を多く作り出すため、テンパリングという温度調節の技術開発に躍起だ▼ただ美味しさの多様性を増やすためには、焙煎や熟成といった工程によって成分を化学変化させる必要がある。その国では最近、愛の告白や義理のプレゼントだけでなく、「健康志向」を売りにした製品が急速に売れているらしい。ここでも化学の技術が駆使されている。(22・2・14)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

セミナーイベント情報はこちら

精留塔の最新記事もっと見る