1970年の解散から50年以上たっても世界中にファンを持つビートルズ。彼らの最後のアルバム「Let It Be」の制作過程を追った新作ドキュメンタリー「Get Back」がディズニー系動画配信サイトで公開されるなど今なお話題は尽きない▼ビートルズは何故こんなにも大きな存在になったのか。ビートルズに関する論考はさまざまあるが、個人的に納得してしまったのが音楽評論家の渋谷陽一氏が唱えた「ビートルズ穴ぼこ論」▼彼らが登場する以前の欠陥部分があまりに巨大だったので、ビートルズが埋めた部分もやたら大きくなってしまったというものだ。自ら歌いたいテーマを自作自演するスタイルは、作詞家・作曲家が楽曲を製作し、歌手がそれを歌う分業制度による音楽では満足できなかった若者たちを強く引きつけた▼もちろん彼らの楽曲が大いに魅力的だったのは間違いない。しかし、結果としてヒット曲を連発できたのは当時のポップス業界に大きな空白地帯があったからではないか。彼らがそれを自覚してはいなかったにせよ▼現代のビジネスに置き換えてみればニーズという穴ぼこをみつけ、それを埋めるのがテクノロジーなのだろう。ポールやジョンのような天才に頼らなくてもチーム力を結集し、ITツールを駆使すれば可能なはずだ。(21・12・3)

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