11年前の東日本大震災で甚大な被害を被った三陸鉄道。一部の区間ではあったが、5日後の3月16日に運転を再開したのは有名な話。震災復興支援列車と銘打って無料で乗車できるようにしたのも英断だった。地元に貢献したい思いを直ちに行動で示したことが共感を呼んだ▼三陸鉄道は地方自治体などが出資して運営する第3セクター鉄道の第1号。前身は3つの旧国鉄の特定地方交通線で、バス輸送への転換が望ましいとされた赤字ローカル線だった。しかし地元の強い要望によって存続が決まったという▼人口減少やモータリゼーションの進展で今も経営は決して楽ではない。それでも集客に向けてさまざまな手を打っている。「震災学習列車」はその一つ。三陸鉄道の社員や沿線住民がガイド役となって、被災地の状況や問題を説明する。防災を自らの問題として考える機会になると評判だ▼一方、昨年12月には復興道路として国が整備を進めてきた三陸沿岸道路が全線開通した。三陸鉄道とほぼ並行しているだけに、乗客数への影響を心配する声も聞かれる▼移動だけを考えれば車の方が早くて便利だろう。しかし鉄路ならではの捨てがたい役割と魅力は必ずある。知恵を出し合って観光などで相乗効果を生む仕掛けができれば「第2の復興・創生」につながっていくのではないか。(22・3・11)

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