コロナ禍、カーボンニュートラル、資本主義の修正。人々の生き方、産業のあり方を変える衝撃が2021年の世界を覆った。そんな年も過ぎ去ろうとしている。産まれ出た日のように、社会人として歩き始めた日のように、昨日までの当たり前から決別する準備はできているだろうか▼コロナ禍で郊外に家を持つ機運が高まっている。テレワークが定着し、都心のオフィスに通う必要がなくなった。だからゆったりとした間取りが実現する郊外に、念願の持ち家を建てようというわけだ。農地が宅地として利用できるようになる「生産緑地の2022年問題」もこの機運に拍車をかけているという▼産業界では、鉄鋼メーカーが自動車メーカーを特許侵害で提訴したり、製品の値上げを勝ち取ったりしたことに驚いた。数量を制する強大な顧客に対し、低い利益率やさまざまなサービスの提供を飲まされてきた素材産業。そうした隷属関係が崩れた。単に需給バランスの問題なのか。それとも、セットメーカーがピラミッドの頂点に立つ構造の終焉を意味するのだろうか▼もう少しだけ、胎内に留まりたい。甘い考えだろうか。きっとこれが最後と、日本の自動車メーカーが渾身の力で開発した純ガソリン車。歴史に残る名車の予感。決別の前に、終わりゆく技術の集大成を味わいたい。(21・12・28)

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