77年前のきょう、米軍B29爆撃機約300機が東京上空に飛来し、約2時間で焼夷弾33万発以上が投下された。下町を中心に全都の約4割が焦土と化し、死者約10万人、家屋約27万戸が焼失し約100万人が家を失ったという。深夜に人家スレスレにまで高度を落としての無差別爆撃、強風、木造家屋密集地域という悪因も重なった▼第二次世界大戦で最大級の被害を出した東京大空襲。この惨事を目の当たりにしても日本政府は方針を変更しなかった。当時の小磯首相はラジオ演説で「断じて一時の不幸に屈することなく、国民が聖戦目的の達成に邁進することを切望する」と呼びかけた。その後の結末は周知の通りだ▼戦争は大きな爪痕を残すだけで誰にもメリットはない。過去の誤った歴史をいくつも知っているのに未だ繰り返される。ロシアによるウクライナ侵攻、連日テレビに流れる悲惨なシーンを目にするにつれ悲しみと同時に人間の愚かさを思い知る。折り合いがつかないままの停戦交渉も虚しいばかりだ▼チェルノブイリの大事故を経験しているのに、攻撃の手は原子力発電所にも及んだ。最悪の事態が何を招くのか皆分かっている。見境ない行動は何ももたらさない。東日本大地震からあすで11年。福島第一原発事故は、未だに多くの人々から美しい故郷を奪ったままだ。(22・3・10)

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