脱ハンコが叫ばれるなか、役所の手続きで認印を要求されることが減った。昨年9月に河野太郎行政改革担当大臣がハンコ廃止を各府省庁に要請したことが契機だ。印鑑登録をしていない認印による手続きはすべて廃止するとした。それから1年足らず、さまざまなところで試行錯誤が進んだ▼きょう8月5日は「ハンコの日」。全日本印章業組合連合会が10月1日と制定した「印章の日」とは別で、山梨県甲府市の印判総合商社が語呂合わせで制定した。手彫りハンコ業者の反対、紙の需要減少といった背景のなか、長らく続いた日本のハンコ文化に変革の時が来た▼コロナ禍にあってテレワークが推奨され、デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れもあり民間企業でもハンコ廃止の流れが加速した。もともと印鑑は中国や韓国を経由して入ってきた。その中国や韓国は、すでに印鑑認証から電子認証への転換を果たしつつあり、デジタル化の大きな原動力になっている▼日本人の真面目な性格ゆえ、なかなか変えることに抵抗があるのか。テレワークが普及しなければ脱ハンコも先延ばしになっただろう。終盤に差しかかった東京オリンピックは世界に多様性を呼び掛けた。横並び意識が強い日本人。多様な価値観が求められるなか、これ以上、世界に遅れをとらぬように。(21・8・5)

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