サステナブル-。持続可能な、という形容詞を見聞きしない日はない。いま世界が目指すサステナブルな社会は、地球環境を大切にしながら、誰もが平和に豊かに生活し続けられる社会を指す。しかし現実はどうか。自国の利益に固執する指導者は世界的な視野に立って課題に立ち向かう気概はない▼人類史上、最も長く存続した国の1つに古代ローマ帝国がある。何世紀にもわたって繁栄できた理由は何か。歴史学者の本村凌二氏は「誠実」「寛容」の2つを挙げている▼誠実であるが故にごまかさず、不足していることに気づくことができ、補って自ら磨くことができた。寛容であるため、ローマ人でなくとも要職に積極的に登用し強くなり、自国の価値観を押しつけることなく主体性を重んじたため、互いの良い部分を増幅できた▼滅亡した要因も誠実さ、寛容さを失ったためだ。自分たちの生活が苦しいのは外国や外国人のせいだと決めつけ、内外で争いが絶えなくなる。そして次第に、懐の深かったローマ人魂を失っていく。現代と似てはいないだろうか▼サステナブルと言うのは容易いが、物事に永遠はなく最も難しい課題である。だからこそ、寛大な心で異なる意見に耳を傾け、さまざまな可能性を考慮しながら、誠実に努力することが欠かせないはずなのだが。(22・6・20)

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