先週末、食材を求め訪れたスーパーで殻付きアサリが見当たらず、熊本県産の産地偽装問題がすぐに頭に浮かんだ。しばしの出荷停止で品薄状態にあるとは聞いていたが、ここまでとは思っていなかった。それもそのはず、全国で販売されているアサリのうち、熊本県産と表示されたものは全体の約8割にも及ぶというのだ▼この問題、偽装の発覚と業者の取り締まりが過去に何度も繰り返されてきたというから問題である。農水省が違反に関する情報を掴んで、最終的に調査・報告を行う都道府県に引き継いでも、その後の対応に大きな差があるなど縦割り行政の弊害も指摘されている▼食品に関する生産地や賞味期限の表示偽装は内部告発などで表面化し、たびたびニュースで取り上げられる。昨年末に京都の老舗ベーカリーによる業務用冷凍パンの賞味期限偽装が発覚したケースは、コロナ禍で発注が少なく在庫を抱えていたことが背景という。理由はどうあれ、食の安全に関することだけに許されない▼食に限らず製造業の偽装事件がしばしば報告され、長年繰り返されてきたケースも稀ではない。培った信頼が一瞬にして崩壊しかねない問題であり、コンプライアンスの徹底が一層問われる。いい出汁を醸し出してくれるアサリが早く身近に戻ってきてくれるためにも、そう願う。(22・2・17)

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