資源が乏しい日本でもガスを使いこなせば自前でエネルギー供給が可能になる-。そのような可能性を秘めているのがMOF(有機金属構造体)だ。ナノスケールの多孔性素材で、金属イオンと有機配位子の組み合わせによって性質を自在に制御できる▼工場から出てくる混合ガスからCO2だけを分離・回収して再利用したり、大量の水素を吸着させて運搬することが可能。カーボンニュートラルの実現に向けて鍵を握る素材とみられている▼しかし「MOFは魔法の粉ではない」と釘を刺すのは名古屋大学発ベンチャー、SyncMOF(シンクモフ)の畠岡潤一社長。水素吸着ひとつとっても濃度、温度、圧力など使用条件はさまざまで、最適なものを探し当てるにはMOFならではの測定技術が求められる▼同社が強調するのは「顧客は決してMOFそのものを求めているのではなく、望む性能を実現する装置を求めている」ということ。素材の合成から装置・デバイス開発まで一貫体制を敷いてこそMOFを使いこなせるのだろう▼水面下で多くの企業と共同開発を進めており、世界中からさまざまなMOFが集まるようになった。その中には似て非なるものもあるという。有望な新素材だけに「社会から認められるように、競合他社を含めきちんと育てていく必要がある」と訴える。(21・11・26)

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