購読している新聞や雑誌から各種のニュースが日々、メールで大量に届く。それらの見出しを眺めていると、一つひとつのニュースからだけでは得られない時代の深層のようなものが見えてくることがある▼たとえば先週末から土日にかけてのこんな見出し。「シニア労働力の幻想 現場の本音は正直足手まとい」「ベテラン勢『妖精さん』 能力生かし不公平感改めるには」。「妖精さん」とは、「働かない」状態になった中高年社員のこと。不公平感を感じる若手が名付けた▼「日本製鉄、過去最大の最終赤字 呉は23年閉鎖」「孤独死、40~50代が2割の衝撃」「武漢で入院の日本人男性死亡 新型肺炎の疑い」などなど。少子高齢化、人口減少、国内需要縮小、グローバル化それぞれの進展…そのような背景が読み取れるだろう。しかも、具体的な歪みが想像以上のスピードで生まれている▼さまざまな要因が輻輳しているから、決定的な処方箋を見いだすのは容易ならざることと大概の人が感じている。それゆえ、悲観的な論調が幅を利かせてしまっているのかもしれない▼しかし、暗いニュース、悲観の材料ばかり探すから悲観的になるという一面もあるだろう。世の中はそのような材料ばかりではないはずである。それを探し、追いかける。報じる者の責任の重さに身が引き締まる思いだ。(20・2・12)

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