「スコッチテープ」とか「セロテープ」という商標で世に出回っているセロハンテープ。その便利さが当たり前になっているから、有難味をあまり感じない人が多いだろう。しかしもし、これがなくなってしまったら、家庭生活や事務・勉強はかなり不便になりそうだ▼セロハンテープは、超最先端の夢の素材が世に出る立役者ともなった。その素材は「グラフェン」。カーボンナノチューブと並んでその将来性が高く評価されるナノカーボンである▼グラファイト(黒鉛)は層状の物質であり、その1原子層がグラフェンだ。それゆえに2次元的ナノカーボンともいわれる。問題はどうやって1原子層を取り出すか。ここにセロハンテープが利用された。グラファイトにテープを付けて薄いグラファイト層を剥がすことを繰り返すと、最終的に1原子層であるグラフェンにまで薄くすることができる▼この方法の発見が2004年。その6年後には二人の発見者にノーベル賞が授与された。現在では、この簡単な物理的方法だけでなく、化学気相成長法、SiCの熱分解といった化学的方法などがある▼極めて薄く軽くてしなやかで透明。そして電気や熱の伝導率など驚異的とも言える特性を持つ。セロハンテープがもしなかったら、この夢の素材の研究は何年遅れていたのだろう。(20・9・9)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る