2021年もはや2週間が経とうとしている。そしてその2週間は、「緊急事態宣言」という言葉とその影響力で一色に塗り込められた。各都道府県の毎日の感染者数の発表だけでなく、市区町村レベルの数字もSNSや新聞の地方版を通じて日々届けられる。きょうは減るか増えるか。毎日の情報収集の中心はそこにある▼感染者や死者が増えた、病床の使用率が何パーセントになったなど数字は危機的状況を伝えているが、それが自分の差し迫った危険として実感できない部分があるのも事実だ。医療崩壊と言葉で伝えられても、医療現場のすさまじい状況を目の当たりにしたことがなければ、それもどこか別の世界のことのように感じてしまう▼21世紀初めの20年間。私たちは人類史上類のない平和と繁栄を享受してきた。そこに、新型コロナのパンデミックや異常気象による甚大な風水害、また富める者とそうでない者の深刻な分断などが脅威として襲いかかっている▼このような状況の下で、せめて自分だけでも心がけたいと年初にこんなことをノートに書き留めた。見えるもの、見たいことだけを見るのではなく、見えないことを現場にいる人と同じように感じられるよう想像力を真面目に働かせよう、と。様々な「分断」を克服するキーワードは「想像力」ではないだろうか。(21・1・13)

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