人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには「疑う余地がない」-。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はこれまで、温暖化の原因が人間活動である可能性を「高い」「非常に高い」「極めて高い」と表現を強めてきたが、今回の第6次評価報告書・第1作業部会(自然科学的根拠)は不確実性を排除するところまで踏み込んだ▼その要因の一つが世界平均気温の上昇幅。産業革命(1850年)以前に比べて2011~20年は1・09度と指摘。観測値と人為・自然起源両方の要因を考慮した推定値の推移はほぼ一致した▼注目されたのは近未来の世界平均気温。気候政策の強弱によって5つのシナリオを評価したが、最もCO2排出を抑えるシナリオでも21~40年に1・2~1・7度上昇すると予測。パリ協定の1・5度目標の達成がいかに困難なことかを示している▼報告書は66カ国から200人の専門家が参加し、1万4000の論文を引用した。執筆者の一人、国立環境研究所の江守正多氏は「これまでと方向性は変わらないが内容はクリアになった」と評価する▼世界各地で異常な高温、大規模な森林火災、洪水が起きている。こうした極端現象は自然破壊だけでなく経済的な損失も大きくなっていく。対策を先延ばしすることは許されない。(21・8・20)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る